こどもが自然と集まる場所
大人の「おもしろそうだから」がいっぱいの小さな科学館 ── 理科ハウス vol.2
何かが始まりそう。
「今日行くと何かあるかもしれない」
こんな期待をもって理科ハウスを訪れる子は多いみたい、と館長の森裕美子さんは言います。
その理由を特徴づけるのが、大人とこどもとの関係。時々足を運ぶという科学好きな大人たちと、学校帰りなどに立ち寄るこどもたちとが、たまたまその場に居合わせた瞬間、「何か特別なことが始まりそう」という気持ちでつながるのです。
「この前は、小6の男の子が豆電球に電気をつける実験をしていたの。そうしたら、電子工作のプロというか、自分で作っている大人がふらっと現れたんです。ちょうどよかったと思って、『この子に説明してよ』とその人に言ったら、ふたりで勝手に盛り上がってるの。たまに出会えるわけですよ、そういう大人に。こどもからするとラッキーでしょ」
別の日にやってきた大人は、野鳥の会の帰り道に「きれいな羽を拾ったから」と、鳥の羽と鳥の巣をもってきたとか。またある日には理科の先生、そしてまた別のある日には科学館の職員、さらに科学者や物理学者など専門家、出版関係者など、科学や自然を共通点に、さまざまな職種、世界の大人たちがやってきてはこどもたちと実験をしたり、おしゃべりをするのだそうです。
「趣味は科学」という大人が、こどもたちにおみやげをもってきたり、虫にとても詳しい昆虫・生物画家が珍しい虫の名前を教えてくれたりすることも。
「たとえその人と出会えなくても、こどもたちにって置いていってくれたものを『この前、こういう人がきたんだよ』と見せてあげれば、こどもたちは間接的にでもその人を知ることができます。わたしたちは、一般のひとと専門家さんをつなぐ役目ができればいいと思っています。『この問題はあの人に聞けばいい』『この実験ならこの人が知ってる』とわかっているから、自分たちがすごく詳しくなくてもこの仕事ができているんです」
「わたしは今年、見ると寿命が延びると言われているカノープスを見たいと思っています。探しづらいけど見たい。みんなも、今年はこの星を見たいって目標をもつといいですよ。楽しみが増えるでしょう」
大人になったら理科ハウスで働きたい。
平日、理科ハウスの来館者数は1日10~20人くらい。ほとんどが小学高学年で、中学生も多いそうです。森さんたちと交わされる会話は、『今日は学校で何してきたの?』『今、理科は何を習ってるの?』など本当にたわいもないこと。
「ここに来るこどもたちは、親御さんたちといっしょに育てているという意識があります。だから、彼らが大人になるのが本当に楽しみ。『大きくなったら戻ってきてくれよ』って思いますよ。わたしたちはここにいるだけだけどね。でも、こどもたちはそれを知ってくれているから」
森さんと山浦さんを中心にして育ってきた理科ハウス。これまでこどもたちと関わった時間は、彼らの成長にも新しい種を蒔いているようです。
「最近は、ここで働きたいという子が増えました。なんなんだろうね。でも、その後に『理科ハウスはお金がないからボランティアだよね』て言われたりもしますけど。『大学生になったらボランティアにくるね』と言ってくれる子もいます。また、ある研究職の仕事をしていた女性は、ここで人に科学の話を伝える楽しさを知ってしまった、と科学館に転職しました。いまは、理科の先生になるって非常勤で働いています。応援しているんですよ。理科の得意な先生がひとりでも増えてくれるとうれしいなあ」
撮影:モギヨシコ 文・編集:たかなしまき
住所:神奈川県逗子市池子2-4-8
電話:046-871-6198
開館時間:PM1:00~PM5:00
閉館日:月曜と金曜
入館料:中学生以下は無料、大人100円
(大人は一年間何回も入館できるフリーパス券1000円あり)
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