のびた人インタビュー

こどもにとって楽しいものになるように。──東京ハイジ インタビューvol.2

こどもやその親を中心に人気のキッズソングを手がける姉妹ユニット、東京ハイジ。前回は、「はみがきのうた」が再生回数4900万アクセスを記録したきっかけや普段の仕事の様子などをご紹介しました。今回お届けするのは、原点ともいえる、こども時代についてです。どうぞお読みください。

 

畑とおじいちゃん

 

──こどもの頃の思い出で、特に印象に残っていることはありますか?

 

トモコ 田舎の実家の裏に200坪くらいの畑があるのですが、よくそこで遊んでいました。わたしが小さい頃は、そこに、ヤギのほかに、ニワトリが200羽くらいいて、卵をとって自給自足をしていたんです。果物の木もいっぱいあって、りんご、桃、梨、さくらんぼ、栗、柿とか、食べたいときに食べていました。

 

──ほかには、どんなふうにして過ごしていましたか?

 

トモコ 畑では、結構、おじいさんとの思い出が多いですね。ある日、畑に、自分ですごくいい小屋を竹で作ったんです。ヒミツ基地みたいなの。そうしたら、おじいさんに壊されちゃった。「あんなの作っておくと、ほかのこどもが勝手に畑にはいってくるから」って。

またある時は、縁日でひよこを買ってきたんですよ。

ワカバ ピンクとか水色の。

トモコ 頑張って育てて、にわとりになりました。とてもかわいがってたんですけど、ある日、いなくなっちゃって。母に「どこに行ったの?」って聞いたら、「おじいさんが食べちゃった」って。孫が大事にしてたにわとりを、平気で食べるって…。

ワカバ 戦時中を生きた人ですから。

ワカバ わたしにとっても、畑が遊び場でした。当時、田舎には何もなかったので、土日に家族でどこかに出かけることがなかったし、テーマパークも行ったことがなかった。

こどもの頃の写真。トモコさん11歳、ワカバさん5歳、弟のマナブさん4歳

こどもの頃の写真。トモコさん11歳、ワカバさん5歳、弟のマナブさん4歳 写真提供:東京ハイジ

 

──畑ではどんな遊びをしていましたか?

 

ワカバ 冬は雪がすごいので、3人で何日かかけてかまくらを作ったりしていました。春は、草をいっぱい集めて、ビンの中に詰めてつぶしてジュースを作るとか。

 

──ジュース?飲めるんですか?

 

ワカバ 飲めないです。汁が出るだけで。

ワカバ あと、小さい頃はどろ団子遊びをよくしていました。

ある日、どうしても泥団子を作るのに水が足りなかったときがあったんですね。で、「自分の体内に水がある」ということに気づいて。こーっそりすみっこでおしっこして。それで泥団子を作ったことを覚えていますね。「あたしって頭いい!」みたいな。

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妹のササキワカバさん

 

 

赤い髪のこと

 

──姉妹関係とご家族について教えてください。

 

ワカバ 姉は、6歳も上だったので、わたしにとってはすごく大きな存在でした。何もかもが憧れでしたね。姉の情報はいつもいい情報でしたし。いつも姉に従っていた。子分ですね。もう一人、わたしより1歳年下の弟がいるんですけど、弟とは日々、激しいけんかを繰り返していました。

それと、高校教師だった父親がものすごく厳しかったので、兄弟3人が肩を寄せ合って、助け合って生きていました。父から自分たちを守るために。ほんとによくグレなかったなと思います。

トモコ それでも、姉弟の中では一番グレてたよね。妹が一番反抗的だったんです。

ワカバ はい。大学生のときに、少しずつ髪を赤くしていったりしてました。少しずつだとバレないかなと思って(笑)。ある時、真っ赤にして帰省したんですけど、さすがに呆れ果てて何も言えなかったみたいですね。

一番怒られて。めっちゃ殴られて。あとで聞いたら、殴られていたのはわたしだけみたいです。みんなやられてると思っていたのに。

テレビも、小学生の頃は週に3本しかテレビを見せてもらえませんでした。わたしは、『レッツゴーヤング』を一生懸命見ていました。あとはNHKのアニメと『大草原の小さな家』。

 

──アイドルが好きだったんですか?

 

ワカバ はい。小学1年のときは、雑誌『明星』と『平凡』を買っていました。歌本目当てで。それを隅から隅まで見尽くしましたね。当時のアイドルにはすごく詳しいです。

 

──トモコさんは、子どもの頃、夢中になったのはやっぱりピアノなのでしょうか。

 

トモコ そうですね。ピアノが異常に好きな子だったんです。

ワカバ 作曲ごっこもしていました。

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姉のササキトモコさん

 

──何かきっかけがあったんですか?

 

トモコ 「ねこふんじゃった」が弾きたかったんです。それで、ピアノ教室に通わせてもらったら、すぐに楽譜が読めるようになって。ピアノ教室で宿題になる曲よりも、自分で気に入った曲の楽譜を自分で買ってきて弾くのが大好きでした。

妹と同じでアイドルは好きだったんですけど、中学生の頃はYMOにはまっていました。坂本龍一さんが好きだったので。

 

しつけが嫌いな理由

 

──逆に、苦手だったものはありますか?

 

ワカバ 運動会が大嫌いでした。小学生の頃は成績が良かったので、「何でも自分は一番なのに、運動会だけ一番になれない」という焦りがあったのかもしれません。天下が取れない。ほかは何でもできると思っていたので。運動会だけは、プライドが傷つくんじゃないでしょうか。

中学生くらいになったら1番、2番はどうでもよくなって、運動会も楽しめるようになりましたけど。

 

──トモコさんはいかがですか?

 

トモコ わたしはズバリ給食です。幼稚園のときから給食がとにかく嫌いで、給食の時間になると、泣きだす子どもでした。だから、お昼は、幼稚園時代、全然食べていないんです。

でも、食べないとずっと残されてしまって。

当時の気持ちは大人になっても忘れられませんね。だから、しつけは嫌いなんです。「最後まで食べなさい」などと押し付けることは大嫌いです。

ワカバ 姉の家族と一緒にご飯を食べると、しつこく子どもに「残していいからね」って言っていますね。

トモコ 幼稚園のときのいやな気持ちが小学2、3年生まで続いて、給食の時間によく泣いていました。登校拒否のきっかけも給食なんですよ。

とにかく給食がいやで、いまだに、においだけで気持ち悪くなったりします。給食のにおいって独特のにおいがしますよね。スーパーのお惣菜のにおいやコンビニのおでんのにおいにも、似た成分を感じますね。

だから、わたしたちが作っているアニメ動画も、「しつけ」と言われていますけど、わたし自身は、しつけは考えないで、こどもにとって楽しいものになるように、と思いながら作っています。

 

青森県のPR動画を姉妹で制作

 

──今、挑戦していること、これから挑戦することはありますか?

 

ワカバ 一番大きな挑戦は、自分たちが生まれ育った青森県五戸(ごのへ)町のPR動画を制作することです。今年一年かけて作るんですけど、今、これが一番大きな挑戦だと思います。こども3人を連れて、数日くらい泊まりに行かなきゃいけない。

 

──そうなんですね。そういえば、東京ハイジのアニメ動画は、ご家族が声優として出演されていることも特徴ですね。

 

ワカバ 「まーだまーだぴっぴっぴ~3枚のおふだ~」というアニメ動画があるんですが、この青森県南部地方の方言バージョンに母が出ています。母は頼めば何でもすすんで出てくれます。

 

トモコ 「うんとでろうんち」では夫の声が少しはいっているんですけど、いやがっているところを「娘が喜ぶからお願い」って無理やりやってもらっていました。

 

 

ワカバ あと、姉の子どもが上手なんです、歌が。すごく難しい大人向けの歌を完璧に歌いこなすよね。

トモコ まだ5歳なんですけど、SEKAI NO OWARIの世界観が大好きで「メンバーになるにはどうしたらいいの?」って聞かれました。試しにライブ映像を見せたら「今セカオワに恋しちゃった」って。歌に。そしてSEKAI NO OWARIのメンバーになるまでのプランをすごく具体的に語ってくれました。

ワカバ (トモコさんと)なんか似てるね(笑)。

 

──東京ハイジとしては、ほかに何か挑戦されることはありますか?

 

トモコ 最近は、体操とかダンスをテーマにした動画の要望が多くなってきた気がしています。

ワカバ 動画では、未発表のものとしては初めての創作絵本を今、計画しています。それは大きな挑戦ですね。

おなじみのキッズソングを絵本にした、DVD付き絵本シリーズ(発行・発売/ブックオフコーポレーション株式会社)

おなじみのキッズソングを絵本にした、DVD付き絵本シリーズ(発行・発売/ブックオフコーポレーション株式会社) 写真提供:東京ハイジ

 

ワカバ ファブリックの第二弾もデザインしているところです。ファブリック系は、近くで見ても、遠目でもかわいいものに惹かれますよね。動画とは何もかもが違うので、すっごく悩みながら作っています。

東京ハイジのオリジナルファブリック。今年3月より全国の手芸店(ネット販売も含む)で販売中(発売/清原株式会社)http://tokioheidi.com/fab/

東京ハイジのオリジナルファブリック。今年3月より全国の手芸店(ネット販売も含む)で販売中(発売/清原株式会社)http://tokioheidi.com/fab/ 写真提供:東京ハイジ

 

──トモコさんはいかがですか?

 

トモコ ソロアルバムを今まで4枚出しているんですけれど、今年、6、7年ぶりに新作を出す予定です。今まで依頼されたものしか作ったことがないので、自分自身の音楽の作り方を忘れちゃっているような気がしていて、ちょっと大変になるだろうなと思っています。スケジュール的にも厳しい。

 

──今、おふたりとも子育て真っ最中でバタバタですが、子どもたちが大きくなったらやりたいことはありますか。子どもたちの手が離れたら、将来やりたいこと。

 

ワカバ わたし、ブライスっていう人形が好きで、それの着せ替えの服を作ったり、大きなドールハウスを作ったりするのが夢です。酒をちびちび飲みながら。

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アメリカ生まれの着せ替え人形、ブライス 写真提供:東京ハイジ

 

──それは、今無理ですよね。

 

ワカバ 絶対に無理です。小さいドールハウスが3つあったんですけど、一番下の子にすべてたたき壊されました。ショックでした!いつの間にか手が届くようになっていて。ピアノの上に置いてたんですけど、よじ昇ってたたき壊された。数か月かけて作ったのに。

お子さんに壊されたという、ワカバさんのドールハウス

お子さんに壊されたという、ワカバさんのドールハウス 写真提供:東京ハイジ

 

─数か月!!それはショックですね……。

 

ワカバ 昼間から酒をちびちび飲んで作れたらどんなに幸せだろうって思います。今、授乳中でお酒も飲めないので。

トモコ わたしは今でもやりたいことがある程度できていますが、好きな時に好きなだけ本を読んだりアニメを見たりしたいですね。あとは、大きくなったこどもと一緒に音楽がやりたいかな。こどもには歌ってもらえたら。

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撮影:みきかよこ インタビュアー:みきかよこ&たかなしまき 文・編集:たかなしまき

 

Profile

東京ハイジ

青森県出身、6歳差の姉妹クリエイターユニット。普段の仕事では、姉のササキトモコが脚本と音楽、歌を担当。妹のササキワカバがイラストとアニメ(動画)を担当し、ふたりでアニメや動画、Webゲーム等の作品を制作している。主な活動拠点はYouTube『東京ハイジ チャンネル』。公式サイト:http://tokioheidi.com/

姉のトモコは、千葉大学教育学部音楽科を卒業後、ゲームメーカーの株式会社セガ・エンタープライゼス(現:株式会社セガゲームス)入社。2004年よりフリー。現在、東京ハイジの活動のほかに、ゲームサウンドクリエーター(ササキトモコ)としても活躍中。

妹のワカバは、岩手大学人文社会科学部卒業後、広告代理店入社。2000年より、フリーのイラストレーターとしてこども番組や絵本などで活躍している。トモコは5歳の娘の母。ワカバは0歳から11歳までの3児の母。

 

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